「大切にしたいこと」を伝える対話が、納得できる医療につながる

Oct 28, 2026

皆さんは、医療機関を受診したとき、医師や医療従事者とどのような会話をしていますか。仕事や生活への影響、副作用や治療の不安など、気になっていることを伝えられていますか。

治療やケアについて考えるとき、医学的な情報と同じように、患者さんやご家族がどのように暮らし、何を大切にしたいのかにも目を向けることが重要です。

ノバルティス ファーマ株式会社は2026年10月10日、患者さん・ご家族、医療従事者、患者団体などとともに、医療における対話について考える「MOSHIMO Day 2026」を開催しました。

その人の暮らしや希望を大切に、ともに考え、決める医療

「ともに考え、決める医療」は、患者さん・ご家族と医療従事者が、医学的な情報と、患者さん自身の生活、価値観、希望を共有しながら、治療やケアについてともに考え、決めていくプロセスです。その人が大切にしたいことを医療につなげ、納得できる選択を一緒に探していきます。医学的に望ましい選択が、すべての人にとって同じように最良とは限らないからこそ、こうした対話が大切になります。こうした考え方は、SDM(Shared Decision Making:共同・共有意思決定)とも呼ばれています。

「大切にしたいこと」と医療の知識を持ち寄り、ともに考える

IgA腎症とともに生活する患者・ミュージシャンの星熊南巫さんにとって、治療や手術を考えるうえで大切だったのは、「これからも歌い続けられるのか」「仕事への影響はないか」ということでした。その思いと不安を医師に伝えたことで、生活背景も踏まえながら、治療の時期や方法をともに考える対話が始まりました。星熊さんは、自分にとって大切なことを伝えるのは「わがまま」ではなく、その人に合った治療を考えるために必要な情報だと語りました。

SDM研究に長年取り組んできた京都大学大学院医学研究科の中山健夫教授は、医学が進歩しても、研究から得られた一般的な結果がすべての人に同じように当てはまるとは限らないと説明しました。だからこそ、医学的に何が「正しいか」だけでなく、医療従事者の知識や経験と、患者さんが大切にしたい生活や希望を持ち寄り、日頃から相談しながら納得できる道を探していくことが本質です。

立場を越えた対話から、ともに決める医療を支える

パネルディスカッション1には、医師、薬剤師、看護師、患者さんなど、異なる立場の登壇者が参加しました。患者さんからは、症状が診察時に現れず、つらさを伝えにくかったことや、治療後の倦怠感、仕事・家事・子育てとの両立など、日々の暮らしへの影響について十分に話せなかった経験が共有されました。症状の記録や写真、事前にまとめた質問などは、言葉にしにくい思いを共有する助けになります。医療従事者からは、症状だけでなく、仕事や生活への影響、患者さんが大切にしたいことにも目を向け、医療従事者から問いかけることの大切さが語られました。患者さんだけに「伝える努力」を求めるのではなく、患者さんが安心して話せる関係をつくることも大切です。「ともに考え、決める医療」の出発点は、患者さんと医療従事者の双方が対話への扉を開くことにあります。

パネルディスカッション2では、SDMに取り組む医師のファシリテーションのもと、さまざまな疾患領域で活動する患者団体から、患者同士の交流や情報提供、成人診療への移行支援、対話支援ツールづくりなどの実践的な事例が紹介されました。患者団体は、患者さんが病気を理解し、自分の希望や不安を言葉にすることを支えるだけでなく、診察室では見えにくい経験や課題を医療や社会に届ける役割も担っています。「ともに考え、決める医療」を広げるには、患者団体を患者さんと医療・社会をつなぐ共創のパートナーと捉え、ともに対話を支える環境を育てることが重要です。

一人ひとりの対話を、社会全体で支える仕組みへ

ワークショップでは、「SDMを初めて聞く人にも伝わることばで表現してみよう」をテーマに、参加者が自身の経験を持ち寄りました。正しい日本語訳や専門的な定義を決めるのではなく、家族や友人に説明するならどう伝えるかを考え、「ともに考え、納得して決める」ことの意味を、それぞれのことばで表しました。SDMを広げる第一歩は、専門用語を説明することではなく、一人ひとりの経験に根ざした身近なことばで、その意味を語り合うことです。

締めくくりには、MOSHIMO Day 2026 ステアリングコミッティ議長・NPO法人パンキャンジャパン 理事長の眞島喜幸さんが「SDM共創宣言」を発表しました。宣言は、一人ひとりが大切にしたいことを安心して伝えられ、患者さん・ご家族と医療従事者がパートナーとして納得できる選択をともに考えられる社会を目指すものです。その実現に向けて、SDMを「知る・支える・実践する」という三つの行動を、多様な立場の人々との協働によって社会全体へ広げていくことを掲げています。

対話を行動へ。「MOSHIMOアクション助成金」を発表

イベントの最後に、ノバルティスは「MOSHIMOアクション助成金」を発表しました。MOSHIMO Dayは一日限りのイベントで終わらせることなく、ここで生まれた気づきとつながりを次の対話と行動へつなげるため、本助成金を通じて「ともに考え、決める医療」の普及と実践に取り組む患者団体を支援し、一人ひとりが納得できる選択を行える医療環境づくりを目指します。

イベントの概要、プログラム、登壇者一覧は、MOSHIMO Day 2026 をご覧ください。