CAR-T細胞療法:患者さん自身の細胞を用いた画期的ながん治療

ノバルティスは、ペンシルベニア大学と共同で、特定の種類の進行性B細胞性血液がんに対し、CAR-T(キメラ抗原受容体T)細胞療法を2017年に米国で世界に先駆けて実用化しました。それは、従来のがん治療とは一線を画す全く新しい治療選択肢です。

Oct 22, 2026

CAR-T細胞療法は、患者さん自身の免疫細胞を用いてがんと闘う、新しいタイプの「生きた薬」。患者さんの体から採取したT細胞(感染や病気から体を守る白血球の一種)を、がん細胞を見つけて攻撃できるように加工して再び体内に戻します。

日々大きく進化しているがん治療の中でも、画期的な治療法のひとつであるCAR-T細胞療法について、がん患者さんのストーリーをたどりながらご紹介します。

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あるB細胞性血液がんの患者さんは、複数回の化学療法と幹細胞移植を受けたものの、十分な効果は得られませんでした。そして間もなく、がんが再発して肺に転移し、進行がんとなったことが確認されました。

大きなショックを受ける患者さんに対し、主治医はさらなる治療選択肢としてCAR-T細胞療法を提案します。

「CAR-T細胞療法で、がんの進行を止められるかもしれません。治療後の長期間の追跡調査データはまだ得られていないものの、治療が成功すればCAR-T細胞が体内でがんと戦い続け、寛解にいたる可能性があります」

患者さんは、CAR-T細胞療法に賭けることを決意しました。

患者さんのT細胞を“生きた薬”に

主治医は、CAR-T細胞療法の実施について国や製薬企業の定める厳格な基準をクリアした認定治療施設を患者さんに紹介します。そこで、がんと闘う上で中心的な役割を果たす患者さん自身のT細胞の採取や、CAR-T細胞の体内への注入、治療中や治療後の患者さんのケアが行われました。

<T細胞の採取から、CAR-T細胞として体内に戻されるまで>

  1. 患者さんから血液を採取・分離して、T細胞を含む白血球を採取(アフェレーシス)。採取された患者さんのT細胞は固有のIDとバーコードで厳重に管理され、製造施設へ
  2. 製造施設で、患者さんのT細胞を、がん細胞を見つけて攻撃できるように加工
  3. 加工されたT細胞はCAR-T細胞となり、培養して増やされ、厳しい品質検査を経て認定治療施設へ
  4. 認定治療施設で、CAR-T細胞を点滴によって再び患者さんの体内へ
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CAR-T細胞注入後の副作用観察

患者さんはCAR-T細胞注入後、副作用の観察のため1週間入院しました。その間、医療従事者は重篤な副作用が発生した際に迅速に対応できるよう綿密にモニタリングを行います。

CAR-T細胞療法は、一般的には化学療法や骨髄移植よりも負担が少ないと言われますが、重篤なリスクも存在します。特に注意すべき副作用は、サイトカイン放出症候群や重篤な神経系事象※などです。症状は軽度のインフルエンザのようなものから、集中治療室でのケアを必要とする重度のものまであります。副作用は早期に治療すれば軽減できることが分かっており、CAR-T細胞療法の治療効果に影響を与えずに副作用を軽減できる様々な抗炎症薬が存在します。

※サイトカイン放出症候群とは、CAR-T細胞や他の免疫細胞の働きが活発になり、免疫反応や炎症を調節するサイトカインが大量に放出され、腫瘍細胞だけでなく正常細胞まで攻撃することで、全身のさまざまな部位で起きる炎症反応です。主な症状として、微熱、疲れやすい、食欲不振、高熱、悪寒、筋肉痛、関節痛、悪心、嘔吐、下痢、汗を多くかく、発疹、頭痛、低血圧、呼吸困難や息切れ、出血が止まりにくいなどがあります。
重篤な神経系事象とは、精神や脳、神経の不調による症状で、多くの場合、治療後1週間程度の間に起こり、1週間程度で治まります。主な症状として、意識がぼんやりした状態でおこる錯覚・幻覚・妄想、不安、めまい・浮遊感、ふるえ、意識障害、時間や場所などがわからなくなる、錯乱、急激に感情が⾼ぶる、けいれん、話すことや読み書きが難しくなるなどがあります。

寛解と定期的な検診

患者さんは、CAR-T細胞療法を受けてから1か月後と3か月後に医師の検診を受け、寛解が確認されました。CAR-T細胞は、1回の投与で患者さんの体内で生きて増殖し続け、何年にもわたってがんを攻撃し続けると考えられています。患者さんは日常生活を取り戻した後も、3か月ごとに継続して医師の診察を受け、がんに対するCAR-T細胞療法の効果を測定します。

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CAR-T細胞療法の未来とがん治療の新時代へ

CAR-T細胞療法は、従来の治療法と異なり、患者さん自身の細胞を用いる治療法です。将来的には、血液がんの早期治療や、固形がんなど他のがん種にもCAR-T細胞を応用することが期待されています。しかし、あらゆるがん治療と同様に、CAR-T細胞療法はすべての患者さんに効果を発揮するわけではありません。また、最初は効果が見られても、時間が経つと再発する場合もあります。

ノバルティスは、CAR-T細胞療法の向上に継続して取り組んでおり、次世代技術や他の治療法との組み合わせなどにも応用し、患者さんにさらなる革新的な治療選択肢を提供することを目指しています。同時に、がん治療は多くの患者さんにとって時間との戦いであることから、ノバルティスはCAR-T細胞の製造プロセスを増強するとともに製造施設を拡大し、より多くの患者さんが治療を迅速に受けられるよう尽力しています。

ノバルティスのCAR-T細胞療法について、詳しくはこちらをご覧ください。