新薬の承認申請へ向けた治験計画の立案・実施から、市販後の評価までを一貫して担う臨床開発職。ノバルティスならではの特徴は、市販後を含む薬のライフサイクル全体に科学的視点で関与できることです。今回は、この臨床開発部門で活躍する二人の社員に、仕事の魅力ややりがい、求められる人物像やマインド、スキルについて聞きました。
プロフィール
貝塚 (Kaizuka)
Clinical Development Division
勤務地:本社
大学時代は、生命科学系を専攻し、大学・大学院を通じてペプチド創薬を専門とする研究室に所属。中途採用でノバルティスに入社。前職では臨床開発モニター職に就いていたが、臨床開発の業務を全般的に担当することを希望して転職。臨床試験の責任者等を経て、現在の臨床開発職に就く。
髙藤 (Takato)
Clinical Development Division
勤務地:本社
大学は薬学部 神経薬理学系を専攻。中途採用でノバルティスに入社。“未来の患者さん”を救いたいとの思いが強く、前職時代から一貫して10年以上臨床開発職に従事。
現在の臨床開発職の業務内容について教えてください
貝塚:臨床開発職の業務を一言で言うと、新しい医薬品やそれに伴う治療法を患者さんに届けるための仕事ということになります。例えば、ある病気に効くかもしれない候補薬が見つかったとしても、それを患者さんがすぐに使うことはできません。本当にそれが薬として効果があるのか、安全なのかを確かめるため治験を行う必要があります。この治験を実施し、国の承認を得るまでの一連の流れが臨床開発という仕事となります。私は、この臨床開発職でオンコロジー(がん領域)のプロジェクトを担当しています。
髙藤:私も同じくオンコロジーのプロジェクトを担当しています。具体的な業務内容としては、新薬の承認へ向けた試験の立案・デザインから、治験の核となるプロトコール(治験実施計画書)の作成、医療機関での実際の治験の実施とそこで得られたデータの解析、治験総括報告書の作成と承認申請書の作成および提出までの業務に科学的立場から携わっています。
Q:ノバルティスの臨床開発職ならではの特徴は、どのようなものでしょうか?
貝塚:一般的に臨床開発といえば、新薬の承認を得るまでの業務を担う部署・職種という認識がほとんどですが、ノバルティスならではの大きな特徴として、承認を取った後の製造販売後調査等や再審査申請対応まで一貫して携わることができることです。
新薬は、治験という限られた条件下で、限られた患者さんを対象に、限られた期間で有効性や安全性を評価し、承認されます。しかし、実際の医療現場では、より多様な患者さんに、より長期間にわたって使用されることになります。そのため、私たちは市販後においても、多様な患者さんにおける長期的な有効性や安全性を確認する必要がある、つまりclinical questionがあると考える場合には製造販売後調査等を企画・実施します。この一連の流れに、承認申請に関わった社員が引き続き携わることで、開発段階で得た知見や課題を生かし、よりニーズに合った調査のデザイン等の検討が可能となります。薬は承認されたら終わりではなく、実際に医療現場や日常生活で使われてからも安全性や有効性を継続的に確認/評価します。
臨床開発職ならではのやりがいについてお聞かせください
貝塚:薬の開発の段階では、治験にご協力いただく医療機関の先生方や多くの関係者から新薬候補に非常に興味を持っていただき、プロジェクトが進むに従って医師を含む関係者全員の期待も高まっていきます。自分が関わった薬が承認され、医療関係者から「ありがとう」と感謝の言葉をいただいたり、間接的であっても患者さんの喜ぶ声が伝わってきたとき、この仕事の意義を心から実感し、やっていて本当によかったと思います。
髙藤:私はまだノバルティスでの業務経験が浅く、自身で担当した薬剤が承認・上市された経験がありません。しかし、治験中の患者さんに薬剤が奏功したということを、データを通して知ることで、「自分が誰かの役に立っている」と感じています。
直接患者さんと接する機会はない職種ですが、治験データの裏にある一人一人の命と向き合っているという実感が、日々の業務へのモチベーションにつながり、やりがいになっています。
また、転職前は承認前の開発業務を担当していましたが、ノバルティスに来てからは承認後の業務にも携わるようになり、臨床開発職として業務範囲が大きく広がりました。新薬開発の全フェーズにEnd-to-Endで関わることでキャリア的にもステップアップでき、大きな責任感とやりがい、満足感を感じています。
臨床開発職における業務の進め方についての特徴は?
髙藤:新薬を創る作業は、チームで進めていく必要があります。社内には、私たちのような科学的な立場で治験や製造販売後調査を推進する社員もいれば、安全性を確認する部門の社員や統計学の専門家、薬事規制に対応する社員などがおり、また、社外では、治験を行う医療機関の専門医など、数多くのステークホルダーがいます。それらの方々と同じ目標を持って協業していくことが臨床開発職の大きな特徴です。
Q:治験を順調に進めていくためのポイントは?
貝塚:臨床開発の仕事では、疾患の特性や患者さんの治療背景を踏まえ、医師とともに日本の医療ニーズに即した試験をデザインすることが重要です。治験が始まってからも医師と定期的に情報交換を行い、必要に応じて医療機関を訪問することもあります。このような協働を通じて、科学的かつ現実的な視点を取り入れた治験の運営が可能になります。
一つの薬が患者さんに届くまでには、さまざまな課題やその解決へ向けた意思決定が必要となりますが、その一つ一つに主体的に関わることが求められています。
新薬承認後の調査の重要性と、再審査申請について教えてください
髙藤:新薬承認後に行われる調査では、承認された新薬が医療現場の実臨床下で、実際どのように使われているのか、様々な状態の患者さんが長期にわたり使用するとどのような作用が体で生じるのかについてデータを収集し評価していきます。長期的な薬の有効性や安全性の確認や副作用によるリスクの最小化など、患者さんにとって望ましい評価を蓄積していくことで、承認後もその薬の価値を高めていくことが可能となります。このような取り組みを私たちは「育薬」と呼び、非常に意義のある仕事と位置付けています。
Q:再審査申請についても教えてください
貝塚:新薬の承認から一定期間が経つと再審査申請というプロセスがあり、承認後調査に基づく薬の評価を厚生労働省に提出します。この再審査申請も臨床開発の重要な業務の一つです。これにより治験では見えなかった医薬品の姿を明らかにし、それを医療現場にフィードバックすることで、より患者さんの治療に資する情報提供が可能となります。
このように、自分が関わった薬が承認され、市販後の評価を経て医薬品としての信頼性が高まっていく過程に一貫して携わることができるのは、まさにノバルティスならではの素晴らしさであり、科学的な貢献と社会的意義の両方を実感できる貴重な経験であると感じています。
ノバルティスの社風や臨床開発職に求められる人物像やマインド、スキルとは?
髙藤:これは、臨床開発に限らずノバルティス全体に当てはまることですが、とてもオープンで様々な意見を取り入れる社風があると感じています。ノバルティスには、出身学部や専門性、キャリアなどが異なる多様な人材がいます。会議中に分からないことがあれば、それぞれの専門家から都度アドバイスをもらえるのが、ノバルティスの特徴です。
貝塚:かなり意見が言いやすい社風であることは、私も常日頃感じています。間違った意見を言ってもそれを否定されることはなく、次々と改善案が提示されます。実際の業務では、複雑な規制や専門用語が多く、最初は誰もが戸惑います。しかし、ノバルティスでは、「分からないことをそのままにしない」ことが歓迎され、質問すること自体が前向きな行動として評価される文化があります。若手社員・中途採用社員でも安心して学び、成長できる環境が整っています。
Q:ノバルティスの臨床開発職として、大切にしていることは何ですか?
髙藤:「患者さん中心の視点」を常に意識することです。私たちの仕事がいずれ患者さんを救う手助けになるということに大きな意義を感じ、真摯に取り組んでいける人物であることが最も重要で大切にしていきたいことだと思っています。例えば、治験のデータを見ても単に数値の変化を追うだけでなく、その時々の患者さんの状態を想定しつつ、責任を持って分析し考察としてまとめていくといった姿勢が求められています。
貝塚:私は、「挑戦する心」も大切にしたいと思っています。ノバルティスは、常に新たな取り組みを模索する企業であるため、自分たちも気持ちを高めて共に成長していこうという姿勢が重要です。
また、「粘り強さ、根気強さ」も重要なマインドの一つです。治験は年単位にわたる長期プロジェクトであり、途中で予期せぬトラブルや困難に直面することも少なくありません。そうした状況下でも、諦めることなく最後までやり遂げる力が治験を成功に導く大きな原動力になります。加えて「変化を楽しむ柔軟性」も必要です。医薬品市場は常に変化しています。新しい疾患知識や技術を柔軟に取り入れ、変化を前向きに捉えるマインドが、成長と活躍の鍵となります。
Q:臨床開発に求められる、具体的なスキルはありますか?
髙藤:チームで行う業務が多いため、コミュニケーション力はやはり求められます。また、それに付随して語学力も必要です。グローバルチームとの連絡業務も多く、英語でのディスカッション、文書作成、メール対応が日常的に求められます。語学力は世界中にいるチームメンバーと協力して、最新の医療情報をキャッチアップするための大きな武器にもなります。
貝塚:ノバルティスでは、新薬の開発において治験の進行に責任を持つオペレーションリーダーと、科学的立場で治験や承認後の調査等をリードするサイエンスリーダーがいます。臨床開発職の担当領域は後者に当たります。
特に、臨床開発では、「チームとして成果を出すこと」を何よりも大切にしています。治験は、医師、治験コーディネーター、社内の多部門、さらにはグローバルメンバーと連携しながら進める複雑なプロジェクトです。一人で完結する仕事ではないからこそ、リーダーシップを発揮し、互いを尊重し、補い合いながら協働する姿勢が不可欠です。
キャリア形成における会社としてのサポート、今後目指したいことは?
Q:会社からのキャリア支援として、どのようなサポートがありますか?
髙藤:例えば、社内公募の充実が挙げられます。ある部署のポジションに空きが出た場合、一定の条件を満たせば誰でも応募することが可能です。現在、私は目の前の仕事に楽しく取り組んでいますが、いつか別の領域や業務にチャレンジしたいと思った時、社内で叶えられる環境があるため、選択肢の幅が広いと感じています。
貝塚:リーダーシップ研修などの職能に応じたスキルアップサポートや、メンター制度なども充実しています。例えば、メンター制度では、自分が次に目指したい部署のマネージャー等にメンターになってもらい、業務のミラーリングをしたりすることで、より業務のイメージを膨らませていくこともできます。
Q:今後、挑戦してみたいことは何でしょうか?
髙藤:AIを活用した治験の立ち上げ・実施に挑戦したいと考えています。オンコロジー領域では、治験のデザイン設計や施設選定、症例の組み入れなど、非常に多くのデータと科学的・医学的判断が求められます。AIを活用することで、過去の治験データやリアルワールドデータを基に、より精度の高い予測や意思決定が可能になると期待しています。実際、すでに社内研修制度を活用して、医療AIの導入へ向けた基礎知識を学び始めています。
貝塚:ノバルティスは、新薬として承認申請する以前の薬の候補を多数有しています。その分、治験・承認申請を行う機会も多く、そのような経験を生かして、日本製薬工業協会など社外の関連団体が行う交流・意見交換の場に積極的に参加して業界全体の発展に貢献したり、そこで得た最新の知識で社内の活性化を図るような活動にも力を入れていきたいと考えています。
ノバルティスの臨床開発を目指す方へのメッセージをお願いします
髙藤:学生の皆さんには、今、目の前にある学業により一層力を注いで取り組んでいただくことが重要だと考えます。臨床開発職では医師をはじめとする専門家と対話をする機会がありますが、基礎知識があることでより的確なディスカッションをすることができ、より深い信頼関係を構築することができます。
中途採用で入社を目指す皆さんには、現在の業務により一層励み、専門性や経験、スキルをさらに磨いていただきたいと考えます。その積み重ねが臨床開発職として活躍するための強固な土台となり、必ず新しい環境で力を発揮できると信じています。
貝塚:ノバルティスの臨床開発職では、実際に治験/承認申請を担当するケースに恵まれ、成長を実感できることが多く、それがキャリア形成においても大きなメリットになります。また、ノバルティスには、Inspired-Curious-Unbossedというカルチャーの下で、年次や経験に関係なく、誰もが主体的に挑戦できる環境があります。医療の未来を創る一員として、あなたの好奇心と情熱を、ぜひ、この会社で生かしてください。私たちは、皆さんの挑戦を心から歓迎します。