知らないから偏見が生まれる


小俣さんは、2005年、「小児がんネットワークMNプロジェクト」を立ち上げた。「MN」とは「みんななかま」と読む。
「小児がんの親の会はたくさんあるけれど、本人たちが出会える場所がない」と「Fellow Tomorrow」という当事者の会をつくったり、小児がん経験者として公の場で講演をしたりするなかで、「いろいろな人とかかわり、10年、20年経ったからこそ見えてくるものがあった」という小俣さん。

MNプロジェクトが目指すのは、「5万人いると言われている小児がん経験者とつながること」、「小児がんに関わる人たちの横のつながりをつくること」と、「小児がんという病気のことを社会に伝えること」

なかでも伝えたいのは、「子どもにもがんがある」ということと「治るようになってきている」ことだ。

「先日、小児がんを特集したNHKの番組を見ていたら、『子どもにがんがあるなんて知らなかった』という視聴者からの声が複数寄せられていました。また、ドラマの影響も大きいですよね。小児がんを扱ったドラマでは、大抵、最後は死んでしまう。だから『白血病なのになんで生きているの?』って言われた子もいます。もっとひどいのは、『白血病がうつるから、あの子と遊んではいけない』と高校生の息子さんに教えているお母さんもいました。知らないために偏見や差別が生まれています」

今年、厚生労働省が設置した「がん対策推進協議会・小児がん専門委員会」の委員も務める小俣さん。「小児がんを取り巻く環境が変わったら、慢性疾患の子どもも、障害を持つ子どもも、療養環境は一緒なので、すべてが変わると思うんです」と期待する。
「小児がんは1万人に一人、年間発症例わずか2,500人の希少がんですから、まだまだ知られていません。まずは、社会に広く知っていただくこと。より多くの人へ広めていく活動の一つとして、12月1日全国小児がん経験者大会を主催する。治る時代になり、国の対策が始まる今だからこそ、意味がある。全国初の試み。200人の小児がん経験者の参加を予測している。詳細はhttp://www.accl.jp/mnproject/news/へ。正しい情報をもっと伝えていきたいですね」

(2012年5月)